飲み会に来てるのに、お酒を超越する後輩君

2020年1月15日

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後輩のM君

後輩のM君は飲み会にはぜったい来ます。

背が高くて細身、
色白で細面の新人君です。

仕事はそこそここなしますが、
ときおり大きなポカもします。

怒られるけれども憎めないといったいいキャラです。

仕事ではそんなに積極性がないくせに、
飲み会では動き回ります。

席の割り振り、飲み物の手配、
おつまみが足りているか、空いたグラスが置かれていないか、
幹事でなくてもどんどん自分から働いています。

「そんなんじゃ自分が飲めないよ。座って飲んで」といっても、
「僕飲み会が好きなんです。飲み会が楽しくないといやなんですよ」といってあっちこっち用事を探します。
飲み会の間はつねにあっちこっちでM君の声が聞こえてかなりにぎやかなのです。

実はM君

実のところ、M君は飲んでいません。

直属の上司なので私は知っていますが、
彼はほとんどお酒が飲めないのです。

ほんのちょっとのビールでも、
真っ赤になってぐたっとしてしまうタイプ、
たぶん体質が受け付けないのだと思います。

学生の時に飲まされて体調を崩したようなことを聞いた覚えがあります。

そのくせ賑やかなことは大好きで、
飲み会となると座っていられないのです。

なにも知らない上司たちは便利な奴だと思っていますが、
それはM君の編み出した自衛策なのかもしれません。

若い彼は、座っていたら飲まされるはずです。

体が大きいだけに飲めそうに見えるからです。

ところがあっちこっちの世話をしていて座るヒマがないので、誰かに捕まる心配がないのです。

賢いM君

その上M君が賢いのは自分のグラスは手にしている事。
ちょっと脇に行っては、
なにか飲み物の入ったグラスを傾けています。

時折りほかの数人と乾杯なんてやっていることもあります。

ちらっと聞いた話では、
あれはお酒ではないらしいです。

ノンアルコールカクテルだとかえってバレるので、
「ウーロン茶のロック」とか、
「氷の水割り」とかを飲んでいるのだとか。

お店の人も心得ていて、
ちゃんとグラスに作ってくれるそうですが、
どこからそんな知恵を見つけてきたのでしょうか。

ビールのグラスを持っているとついついお代わりをつがれてしまいますが、
氷の入っているグラスならつぎ足される心配がないのでしょう。

何を飲んでいるか聞かれたら、
水割りとかロックとかだけ言えばいいのです。

そしてM君はもう飲み会で働く人と思われているので、
彼が飲んでいなくても誰もわからないのです。

でも本人はいたって楽しそうで、
飲み会にはほぼ皆勤といったところです。

飲み会の楽しさはお酒だけじゃないのでしょうね。

あっけらかんとした笑顔をみると、
お酒を超越した何かを体得しているM君がうらやましくなってくるくらいです。

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