日本酒は恩師へのプレゼントに最適
Contents
三年間お世話になった教授
親身になってくれる教授なんですが、住んでる場所の関係であんまり放課後の交流もない、高名な教授なので立場的にも学生からしたら大分上。
そんな教授が、学生からお酒をもらって・・・!?
大学在学中、三年間お世話になった教授とは、あまり放課後の交流がありませんでした。
ほかのゼミの学生は毎週のように教授と飲みに行っていましたが、
東京から来てくださっていた私たちの教授は、すぐに新幹線に乗って帰ってしまいました。
教授はかなりのご高齢で、私たちの卒業とともに大学を去るという話でした。
私たちは教授になにか、感謝を伝えたいと思いました。
なにか、プレゼントしたいと思い、みんなで考えました。
それで思い至ったのが、お酒をプレゼントすることでした。
飲みに行ったことはなくとも、教授がかなりのお酒好き、
それも日本酒が好きであることは、話から知っていたのです。
それで、ゼミ生のなかでもお酒好きな男の子が率先して銘柄を決め、
そこに、教授を象徴するようなラベルを特別に注文しました。
いわゆる名入れというものです。
プレゼントをする最後のゼミの日
最後のゼミの日、
教授は私たちひとりひとりを自分の研究室へ順番に呼び、面談という名の激励をしてくださいました。
中には泣いて帰ってくる学生もいました。
その後、教授がゼミ室へ来たとき、私たちは大きな花束と日本酒を用意して、教授にプレゼントしました。
そのとき私たちは、これまで三年間もお世話になっていながら、
教授になにかをプレゼントするということがなかった、ということに気づきました。
教授はとても高名な方だったので、花束もお酒も、もらうことには慣れていたと思います。
もっといい花やお酒も、たくさん知っていたと思います。
でも、自分にとって最後の教え子である、私たちからのプレゼントを心から喜んでくれました。
教授の口からは、漏れるように「ありがとう」ということばが聞こえてきて、
それで私たちは、もう教授から当たり前のように、いろんなことを教わる機会がなくなるのだと、実感しました。
それから私たちはみんなで記念撮影をして、そのときにはもう誰も泣いていませんでした。
でも教授は、いつもなら脱ぐ帽子を、いつもより目深にかぶったままでした。
ビンとして形に残る日本酒
私たちと教授との間には、半世紀ほどの年齢差がありましたが、私たちがぐっと背伸びをし、
教授が寄り添うように、その一本の日本酒を介して、大人としての贈り物ができたように思います。
自分で買っては飲まないお酒も、人からもらうと嬉しいもの。
それも、心のこもった贈り物ともなれば、その喜びはひとしおです。
私たちはそれぞれ、卒業制作や就職活動に忙しくまとまった時間が取れず、
たとえば手作りのものを贈る、といったことができなかったのですが、
それでも教授の満面の笑顔を見たときに、ビンとして形に残る日本酒は、プレゼントとして最適だったのではないかと喜ばしく思いました。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません