ウイスキー、ブランデーについての基礎知識-2

2017年4月27日

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そもそもブランデーとはなんなんだろう?

ブランデーには大きく分けて2種類ありまして、1つはブドウを原料とした「グレープブランデー」。

もう1種類はブドウ以外を原料とした「フルーツブランデー」です。

その辺思ったよりずいぶんざっくりなんですけども(笑)
ちなみにブランデーと言えば基本的にグレープブランデーのことを指します。

製造の仕組みということで言いますと、まずブドウ等の果実類からワインを造ります。
そのワインを蒸留するとブランデーになる、というわけ。

世界的に有名なのはフランスのアルマニャック地方やコニャック地方のもので、ブランデーの生産が始まったのも15世紀のこの地方と言われています。

1713年にはルイ14世がフランスのブランデーを保護する法律を作り、「王侯の酒」としての地位を確立していったというのだから相当大事にされていたのは間違いないようです。

現代でもブランデーの名前として「コニャック」「アルマニャック」という名前を使うには厳しい制限があり、なんなら同じフランス国内のものであっても「フレンチ・ブランデー」としか名乗れないというんだからめちゃくちゃ厳しいですな。

主なブランドはカミュ、レミーマルタン、ヘネシー、マーテル、オタール等。日本で製造しているのはサントリーやニッカウヰスキー等があります。

今回は、前回のウイスキーに続いてブランデーについて書いていこうと思います。

ブランデーの造り方

ここでは代表的なブランデーであるところの「コニャック」の製造法について書いていきます。

コニャックを造る際に最も多く使われるブドウは「ユニブラン種(別名:サンテミリオン種)」と呼ばれるブドウ。
このブドウは酸が多く糖度があまり上がらないため、ワインの材料としてはイマイチ。

ワインにしても取り立てて高級なものにはなりませんが、醪(もろみ)を蒸留すると素晴らしいブランデーになります。

なぜワインには適さないけれどもブランデーには適しているということになるかというと、

1.酸が多いと果汁が酸性になる
2.酸性になると雑菌汚染が抑制できる
3.それにより、香気成分の生成が促進させる
4.醪のアルコール度数が高くならない
5.そのため、大量の醪を蒸留しても少量のブランデーしかできない
6.結果、たくさんのブドウを使うことになり、香味が濃縮されて出てくる

等々の理由によります。

ブドウは収穫後に圧搾機を用いて果皮や種子をつぶさないように果汁を搾り取ります。
この果汁を発酵させると、糖分が少ないために比較的アルコール分の低い(8%前後)醪が出来上がります。

出来上がった醪は単式蒸留機で2回蒸留を行います。
ウイスキーとは違い、ここで使われる蒸留機は1回目、2回目ともに同じ蒸留機を使います。

1回目の蒸留で、「ブルイイ(粗留液)」と呼ばれる、アルコール分が28%前後のやや濁りのある液体が出来上がります。

これを再び蒸留し、前留、後留を取り除いた中留と呼ばれる中心の部分だけを採取・・・というと、モルトウイスキーの「ヘッド」、「ハート」、「テイル」の内、「ハート」を取り出すというのに似てますな。

実際その通りで、2回目の蒸留の際、前留→中留への切り替え、中留→後留への切り替えのタイミングが、出来上がるブランデーの品質にとって非常に重要なことになる、という部分もあります。

こうして取り出された中留という蒸留液、このアルコール分70%前後の透明な新酒は、樽で熟成されておいしいブランデーになっていきます。

ちなみにコニャックと並び代表的なブランデーであるアルマニャックは、半連続式蒸留機と呼ばれる蒸留機で1回だけ蒸留して造られます。

そのため、コニャックに比べると野性的で香りに富むフレッシュな味わいのブランデー、というのがアルマニャックの特徴。
やっぱりこちらも蒸留後、樽に詰められて熟成させます。

ブランデーの調合

長時間熟成された数多くの樽の中から、商品のコンセプトに合うように調合されます。

樽での熟成年数や、生産地区、ブドウの品種も異なるブランデーは、当然一つ一つフレーバーやアロマ等の個性が違います。
これをマスターブレンダーと呼ばれる職人が、原酒を選んで味と香りのバランスが取れたブランデーを仕上げます。

ちなみに、ブランデーはこのように様々な製造年のものを調合して造られるため、ワインのように「製造年」は生されません。

かわりの表示として、VSOPやXO等の記号が表示されています。
これは「最低貯蔵年数」のことで、ブレンドされた原酒の内、一番短い貯蔵年数を表しています。

フランスではブドウを収穫した翌年3月までに蒸留しなければならない決まりになっており、4月1日を酒令0歳として計算します。

滓(かす)取りブランデー

滓取りブランデーとは、ワインを製造した際に出るブドウの搾り滓を蒸留したブランデーのこと。

生産地域により様々な呼び方があり、国→滓取りブランデーの呼び方という形で表記しますと、

フランス→マール
イタリア→グラッパ
スペイン→オルーホ
南米→アグアルディエンテ

等々の呼び方で親しまれています。

ブランデーは中世の頃法律で保護されていたとか「王侯の酒」と呼ばれていた、なんてなことはこの記事の冒頭でも書きました。

それはつまりブランデーは当時庶民の口に入るようなお酒ではなかった、ということ。

そこで登場するのが滓取りブランデー。
ワインを作った時に残ったブドウの搾り滓を蒸留して造ったのが始まりと言われているそう。

庶民の涙ぐましい努力を感じますな~!

豆腐が高級品で食えないからオカラを食う、みたいなことかしら?微妙な例えだな(笑)

現在でもフランスのブルゴーニュ地方では昔ながらの蒸留機を積んでワイン醸造所を回り、マールを造る、という光景を見ることができます。

なんやかや言って、高いブランデーより安い滓取りブランデーの方が口に合う、という庶民がたくさんいるんでしょうね、分かりますとも、同じ貧乏舌として(笑)

イタリアなんかでは消化を助けるために、食後にグラッパを飲む、というのが一般的な飲み方でしたが、最近ではエスプレッソコーヒーに入れる、シャーベットにかける、等々、飲み方も多様化しています。

一部の滓取りブランデーを除き、一般的には樽貯蔵をしないため無色透明が基本。
熟成なんか待ってらんねぇや!という、庶民の貧乏性が・・・?

フルーツブランデー

フルーツブランデーは世界各地で造られており、もちろん日本でも作られています。

材料としてはキルシュ(さくらんぼ)、ミラベル(黄梅)、ケッチ(すもも)、フランボワーズ(木苺)、ポワールウイリアム(洋ナシ)、コワン(かりん)等々、様々な果実が使われています。

一般的には樽貯蔵をしないため、無色透明。
また、樽貯蔵をしていないため原料果実由来の特徴的な香りが生きたお酒に仕上がります。

ヨーロッパではこれらフルーツブランデーは、滓取りブランデーと同じように食後酒として消化を助けたり、または寒い地方で体を温めたりといった飲み方をされています。
また、特徴的な香りがあることを活かしてお菓子を作る際に天然の香料として使われる場合も多いです。

まとめ

・ブランデーは中世には「王侯の酒」と呼ばれていました
・ブランデーは蒸留後、樽の中で熟成されます
・熟成されたブランデーを、マスターブレンダーがブレンドして、商品になります
・滓取りブランデー、フルーツブランデーといった種類のものもあります

王侯の酒が庶民でも飲める、なんていい時代なんでしょう!でもまぁ、普段は安いブランデーか滓取りブランデーをちびちびやってるんだろな、庶民は(笑)

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