全国各地のお酒:東北編その1

2017年4月27日

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東北のお酒の特徴

東北のお酒の一番の特徴は、酒質のキレイさ。東北の酒米がスリムで美しい酒質に仕上げ、かつ極寒の地で菌の少ない寒造りが、そのキレイさを実現する要因です。

また、米どころが多いだけあって酒米の開発も盛んです。

秋田酒こまち、蔵の華、吟吹雪などが開発され、原生種の亀の尾もあるというんですから、相当種類が多いといえます。

優れた醸造技術を持った指導者の存在もありますので、各県非常に技術レベルが高く、新酒鑑評会金賞受賞数はほかの地域に比べてダントツトップです。

新しい醸造技術や、新麹の開発等々、新しい技術の開発にも余念がありません。

今回から何度かに分けて、東北のお酒をいくつかご紹介していこうと思います。

豊盃(青森県 三浦酒造株式会社 創業年:1930年、昭和5年)

「豊盃」というちょっと変わった名前の響きは、津軽地方の民謡「ホーハイ節」から来ています。

津軽リンゴのような香りがあって1日の疲れを癒す、甘味があり、まろやかなんだけど後味がスッキリ、という味わい。

原料米はお酒の名前と同じ「豊盃」(これを使っているのは全国でもここだけ!)をはじめ、青森の代表的な酒米品種の華吹雪、華想い等、契約栽培米の質にこだわっています。

近年の目覚ましい品質向上により、一躍その名を知らしめました。

与右衛門(与は正しくは酉へんに与える。岩手県 合資会社川村酒造店 創業年:1922年、大正11年)

日本で最大の杜氏集団が南部杜氏、その南部杜氏の根拠地であるところの岩手県花巻市石鳥谷町に蔵を構えています。

使用する原料米は美山錦や亀の尾など、石鳥谷産の米が中心で、自家田産や契約栽培にこだわっています。

冬の寒さが厳しく、最低気温が-15度まで下がります。

そのため醪等の温度管理が非常に難しいですが、寒さに鍛え抜かれて醸された味わいは、旨口で、かつ飲み疲れしない味。

太平洋の魚介ととてもよく合います。

南部美人(岩手県 株式会社南部美人 創業年:1902年、明治35年)

岩手県二戸市にある酒蔵。二戸市はその昔南部と呼ばれていたんですね。

創業が1902年ですが、雑味の多い酒が主流の時代に、雑味のない綺麗な酒を作ろうと志し、「南部美人」と命名。

原料米には、ぎんおとめや吟ぎんがが中心で使用され、中でもぎんおとめは岩手県北だけで栽培される酒米。

さらに、地元の営農組合と契約し、100%を南部美人で使用しているというのですから、すごいこだわりです。

仕込みについても、米を潰さないために櫂を使わず手を使ってかき混ぜる「手もと法」で米と米麹を混ぜるなど、昔ながらの丁寧な仕込みにこだわっています。

愛宕の松・伯楽星(宮城県 株式会社新澤醸造店 創業年1873年、明治6年)

蔵王連峰の大自然に囲まれた雪深い山間部に移転したのが2013年。

蔵の敷地内から湧き出る良質な軟水を、ろ過処理を一切行わずに仕込み水に使う、珍しい天然水仕込みを行ってる酒蔵。

原料を精米後、研米機を使って性格丁寧に磨き上げています。

目指しているのは、「料理の脇役」。あえて香りと甘さを控え、料理の引き立て役に徹する、黒子の酒を造っています。

味わいは軽快できれい、そのため、飲み始めるとついもう一杯もう一杯と杯が進んでしまうお酒です(笑)

夏季限定の「純米吟醸ひと夏の恋」には、ひとめぼれが使用されています。

「このお酒に『ひとめぼれ』をして、『恋』をしていただければ」という、蔵元の思いがこもっているんだとか。

墨廼江(宮城県 墨廼江酒蔵株式会社 創業年1845年、弘化2年)

江戸時代の石巻市には、北上川の支流に墨廼江川という川がありました。

そこで海産物問屋を営んでいたところ、やがて酒造業も手掛けるようになったのが、このお酒の始まり。

仕込みは北上川の伏流水と宮城県酵母で仕込んでいます。
さらに上質な酒にこだわり、作っているお酒の8割強を特定名称酒が占めています。

原料米は山田錦、五百万石、蔵の華、八反錦、雄町等々。

米の特徴によってお酒を造り分けていますが、全体的には控えめな果実に似た香りがします。

キレイで柔らかく、透明でフレッシュ感のある酒質で、キレの良い後味で飲み飽きません。

日高見(宮城県 株式会社平孝酒蔵 創業年1861年、文久元年)

蔵元が通称鮨王子と呼ばれています。その由来は、新鮮な刺身に合うようこだわって酒造りをしているから。

魚の臭みを消す仄かな香りを持ち、魚の味に寄り添い、その味を引き立てる・・・しかし上品で柔らかいという自己主張もしっかりあるところが特徴です。

世界有数の漁場と呼ばれる金華山沖。その秘密は、近隣の山に保全された雑木林が多く、山の養分が海に流れ込んで豊かにしているから。

つまり、海の幸が美味しい秘密は、山の水にある、というわけなんです。その牡鹿半島系の伏流水を仕込水に使う日高見のお酒、これが魚介に合わないわけがない!

綿屋(宮城県 金の井酒造株式会社 創業年:1915年、大正4年)

宮城県の最北端に位置する栗原市一迫にある蔵です。このお酒の最大の特徴は、「ここでしかできないお酒」であるということ。

「綿屋」という名前が示す通り、綿のようにふわっとした丸みがある口当たり。

それを生み出すのは、真冬の朝は息も凍る-19℃の気候、農家と土づくりから考えているお米と、小曽山水の天然水、それらの環境を最大限に活かした酒造り。

純米でしっかりとした味わいがありながら、余韻はしっかりと切れておいしいお酒。

料理によく合う食中酒であり、穏やかな洋ナシ風の果実香が特徴です。

使用するお米に関しても、漢方米や有機栽培米にこだわり、中でも30年以上有機栽培を実践している黒澤米、山田錦のお酒が奥深い魅力があると評判です!

萩の鶴(宮城県 萩野酒造株式会社 創業年:1840年、天保11年)

酒蔵がある、栗原市金成有壁(かんなりありかべ)が、昔「萩野村」と呼ばれていたことから、「萩の鶴」と命名されました。

宮城のお酒に多く見られる、キレイでスッキリとした飲み飽きないお酒です。この酒蔵は、この「萩の鶴」と、「日輪田」という、淡いお酒と濃いお酒を醸しわけているんです。

「萩の鶴」に対するもう一方のお酒が、古代の神にささげる穀物を育てた丸い田から作られる「日輪田」。

全量山廃仕込みで米のうまみをを重視し、濃口料理にも適しています。
どっちにも共通して、醸造技術が高く、ハイクオリティな酒造り。

派手さを抑えながらも、飲むほどにさわやかなうまみが広がるお酒です。

常に最新の醸造技術を研究し、新製品の導入にも熱心な酒蔵です。

田酒(青森県 株式会社西田酒造店 創業年:1878年、明治11年)

青森市発祥の地と言われる油川大浜にある蔵です。本州の最北端に近い場所。田酒の田は、もちろん田んぼの意味。

米のうまみが生きる旨口の酒を造るため、田んぼ以外の生産物である醸造用アルコールや醸造用糖類は一切使用していないことを主張しています。

原料米には8割近くに地元青森県産の米を使用しており、旨味成分のグルタミン酸等のアミノ酸をしっかり味わえるお酒を目指しています。

全国でも田酒でしか使用していない古城錦を栽培しています。

これらのお酒は、純米系のお酒は大間のマグロやカツオ等の赤身の魚、吟醸系のお酒は青森市のヒラメ等の白身の魚と好相性。

さすがは、食材が豊富な青森のお酒ですね!

まとめ

・東北のお酒は、キレイで美しい酒質が特徴
・酒米の開発も盛んで、様々な種類の酒米が使用されています
・飲み飽きない、スッキリとしたお酒が多いです
・魚介や山の幸に合う、料理を引き立てるお酒

東北だけでもまだまだあるよ!先はながいですよ~(笑)

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