米は酒の命!どんなお米が日本酒に向いてるか?
Contents
お米によって変わる日本酒
他の記事でもお米については触れていますが、日本酒に向いているお米は基本的に私達が普段食べているものとは違います。
いわゆる酒造好適米というやつでして、普段食べているお米とは違う、いくつかの特徴があります。
実際に酒造好適米を普段食べているお米のように炊いて食べると、あんまり美味しくないという話もあります。
お酒造りに必要な米の中心部、心白の部分は普通に炊いても旨味が出ません。
逆にお酒造りの際には雑味の原因になるからといってとってしまう、外側の部分が普段食べているお米の旨味の元なんですね。
酒造好適米は酒造りに必要な心白の部分がデカいので、炊いて食べてもあんまり美味しくない、というわけ。
とはいえ、世の中には酒造好適米を炊いて食べてみた、という物好きな方もいるようで、ブログとか読んでみると結構美味しかった、なんて話もみかけます。
もしかすると昔の酒造好適米は炊いて食べたらまずかったけど、最近のはすごく品質が上がってるので炊いて食べても美味しい、ということかもしれませんねぇ。
管理人もその内酒造好適米を炊いて食べてみたいもんだ・・・いや、やっぱり日本酒のがいいかな・・・(笑)
今回は、そんな酒造好適米の特徴について、書いていこうかと思います。
酒造好適米の特徴
酒造好適米の特徴は、硬く大粒で中心部に心白と呼ばれる白い部分があること。
より上質の日本酒を造るためには、雑味のもとになるたんぱく質や脂質・・・お米の場合は糠ですね・・・が少なく、でんぷんの純度が高いことが高いことが求められます。
酒造好適米は米の表層部にたんぱく質があり、中心部にでんぷんが集中しているため、精米、つまり外側を磨いてやることで高品質なお酒を造ることが可能、というわけ。
その他、酒造好適米の機能的な特徴はこんなかんじです。
1.精米しやすい
精米しやすいとはつまり、精米歩合70~50%まで磨いても割れたりせず、大粒でしっかりした均質のもの、ということ。
割れてしまうと吸水率が変わってくるので、よろしくないんですね~。
2.たんぱく質が少ない
たんぱく質はうまみのもとになりますが、多すぎるとそれはそれで雑味のもとになるのです。
たんぱく質が少なくて、相対的にでんぷん質の比率が多いもの、が酒造好適米に向いています。
3.吸水性が良い
吸水性が良いとは、たくさん水を含むというのももちろん、割れたりせずに「目標吸水率に設定しやすい」こと、これが良い蒸米の条件となります。
4.麹が生育しやすい
内部組織が柔らかく、内側に水分をたっぷりと保持でき、菌糸が食い込んでいきやすいこと。
5.糖化されやすい
麹菌の生み出す糖化酵素が程よく働き、酒母の中で糖化速度が管理しやすいことが重要。早けりゃいいってもんでもないんですねぇ。
6.醪に溶けやすい
お米を蒸したときに外側が硬く、内側が柔らかく、という形に仕上げやすい。
・・・のは重要なんですが、それと同時に醪の中では溶けやすいというのも条件。
ワガママだなぁ(笑)
これらに加えてさらに、粒が大きく心白が大きい、というのも重要な特徴。
これらの特徴をもった酒造好適米の王と呼ばれていたのが山田錦。
かつて鑑評会に出品されるお酒に使用されているお酒には大概山田錦が使われている、という時代があった、んですね。
山田錦は、酒造好適米として優れてはいるものの草丈が高く倒れやすかった山田穂を母親に、草丈の低い短稈渡船を父親として生まれた品種。
酒造好適米としてすべてに優れているんですが、さらに素晴らしいのが「融通性に優れている」こと。
例えば吸水の過程で吸水の過不足があった・・・場合でも、なんやかや調整がきき、最終的にいい感じになる、という優しいお米(笑)
そのため山田錦がいろんなところで使われていた、というわけ。
ところが、山田錦が悪い・・・わけではもちろんないんですが、山田錦はどうしても産地が限られちゃうんですよねぇ。
つまり、山田錦だよりだとどうしても勝てない蔵が出てくる、というわけ。
そのため、最近では地元産の酒造好適米でかもす酒造りが盛んになってきています。
山田錦を超える、地元の米を作ろう!!っつって作られたお米が、
北海道→「吟風」「彗星」
青森→「華吹雪」
秋田→「吟の精」
山形→「出羽燦々」
新潟→「越淡麗」
等々、等々。
さらには一度絶えてしまった酒米を復活する試みも盛んで、各地各様の酒造好適米に対する取り組みが起こっています。
酒造好適米を、磨く
米を磨くとは、外側の糠を削って中心部を残すこと。
通常私たちが家で炊いて食べるお米は、玄米から白米になる段階で一割程度重量が減ります。
つまり玄米から白米になる段階で、一割程度削られている、ということ。
この削る作業が、いわゆる「精米」という作業になります。
酒造好適米で言いますと、「精米歩合」という基準があります。
例えば「精米歩合70%」というと、外側を30%削り、70%残した、ということ。
もう一つの基準が、「精白率」。
こちらは例えば精白率30%というと、外側を30%削った、ということ。
つまり精米歩合が「どれだけ残したか」という基準で、精白率が「どれだけ削ったか」という数字ですので、精米歩合70%と精白率30%というのは同じ意味、なんですね。
同じ米、同じ酵母を使用しても精米歩合70%と80%では出来上がるお酒が大きく異なります。
米の外側には脂肪やたんぱく質が多いので、磨き方が少ないと味が多く味が濃い、かつ旨味の多いお酒が出来上がります。
たくさん磨くとすっきりとした香り高いタイプのお酒が出来上がるというわけ。
とはいえ、磨けばいいってものでもありません。
外側の脂肪やたんぱく質は精米歩合70%くらいまでは急速に減少しますが、それを超えると減り方は緩やかになります。
そこからさらに精米歩合を上げたとしても50~60%くらいで糠はほぼ削り取られます。
つまりそれ以上削ってもそこまで味は変わらない。
精米歩合の上限は35%くらいと言われております。
技術的な研究であったり、工芸品のようなお酒を求めた結果として、精米歩合20数%とか、10数%というお酒もあります。
が、まぁある意味趣味性の高いお酒といえますので、管理人とかのような一般人の口に入るこたないでしょうね。
そもそもがですね、精米歩合が上がれば上がるほど原料のお米が割れやすくなるんですね。
例えば100キロのお米を磨いて60キロにすると、精米歩合は60%ということになります。
この60%は、「見かけ精米歩合」と呼ばれます。なぜ見かけと呼ばれるかと言いますと、全てのお米粒が均等に磨かれるわけではないですから、磨かれ過ぎて割れてしまうお米粒が出てくるんですね。
例えば見かけ精米歩合60%のお米を作り、その中で米の形状を保ったお米粒1000粒を抜き出します。その1000粒を、元の玄米1000粒と重さを比べます。
抜き出した1000粒の重量÷元の玄米1000粒の重量×100
この計算式で導き出されるのが「真精米歩合」。
この「見かけ精米歩合」と「真精米歩合」が近いかどうか?というのがお酒の品質に大きく影響する非常に重要な要素なんですね。
この差が大きいか小さいかというのは磨く人のウデにも大きく左右されますが、精米歩合が高いとお米が割れやすくなるため、見かけ精米歩合と真精米歩合の差が大きくなりやすい。
この辺は熟練の職人でも、現代の技術をもってしてもいまだに難しいところなんだそう。
精米歩合の高い大吟醸酒なんかを飲むときに、これでさらにありがたさを噛み締められるってもんですよ!!
まとめ
・酒造好適米は、糠が少なくでんぷんの純度が高いのが特徴
・山田錦が酒造好適米の王でしたが、各酒蔵が地元でお米を開発する流れもできています
・精米歩合によって出来上がるお酒の味わいも変わります
・真精米歩合が重要!精米歩合が上がるほど、真精米歩合を保つのは難しくなります
蔵元や杜氏はよく話題になりますが、精米歩合の高い日本酒を飲む際はお米を磨く職人さんにも思いを馳せてみてはいかがでしょうか?
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません